教授よりご挨拶


 医学における微生物学は、微生物(ウイルス,細菌,真菌など)が体に侵入して起きる有害事象、いわゆる感染症を対象としています。医療の分野に身を置く人にとって感染症にかかわらずに仕事をしていくことはできないといって過言ではありません。どの診療科でも微生物感染がからむ疾患があります。わたくしたちは、多種多様な感染症とその症状がどのようにして起きるのかを微生物と感染症を起こす宿主の両面から感染症を細胞のレベル,分子のレベルで説明することを目指して研究と教育を進めています。

 感染症が起きるのには、その微生物の性質(病原微生物)、感染した人の病気の起こしやすさ(感受性のある宿主)、どのような経路で病原体が侵入してくるのか(感染経路)という三つの要素が絡み合って起きています。したがって微生物のことだけを知るのではなく、わたくしたちヒトの側の免疫力や抵抗力についても研究をする必要があります。わたくしたちは微生物が宿主に侵入したときにおきる微生物と宿主との格闘を細胞あるいは分子のレベルで明らかにしようとしています。特に、微生物の侵入に対して最前線で活躍している自然免疫に着目しています。

 わたくしたちは研究によって、まったく新しい感染症治療戦略を見出すことを目指しています。新規治療薬探索やワクチンに応用できる弱毒の細菌,ウイルス創出の戦略に応用できることを期待しています。

 一方で、院内,市中を問わず抗菌薬治療を困難にしている耐性菌について、疫学的な現状や耐性の分子機構について研究しています。研究成果に基づいて、適正な抗菌薬の選択と使用に関する提言することを目標としています。

 医学部の基礎部門の研究室の使命として、医学研究、臨床実学への後方支援を忘れないようにしています。本研究室は多彩な研究テーマを抱えていますが、「ヒトあるいはヒト社会と微生物の関係はどのようにあるべきか」に集約されると思っています。

札幌医科大学医学部

微生物学講座 教授

 

横田 伸一